わたしは、失わない

ここには過去も今も未来も同時にあって
わたしは時間の揺らぎの中を、彷徨っている

探しているのは
聞きたかった言葉?
告げられなかった秘密?

踏み入れた冷たい森の奥深く
沈み込んでいくほどに思い知る
失ったものたちがすぐそばで生きていること
その優しさに常に守られているということ

羊歯しだの茂みのあいだに
永遠に変わらないあの景色があり
白い霧はまるで吐息のようにわたしを抱きしめる

闇の中に漂う花や葉の香り
獣たちの輝くあたたかい瞳

わたしは歩くほどに恐れを忘れる
疲れたら休み、傷を乾かし、目を閉じて、夢をみる

やがて
またなにか失われたとしても
わたしは、歩き続ける

打ちひしがれているあなたの手をとって
そっと唱える

大丈夫
なにも失われない
失われるものなどなにもない
すべてがここにあるのだから